【制作ノート】−14 LUFSと決めたのに、公開済みは揃っていなかった|YouTubeの音量補正を自分の動画で実測した

We chose -14 LUFS

このチャンネルの音源は、2026年7月から「統合ラウドネス −14 LUFS、トゥルーピーク −1.5 dBTP以下」を標準にし、7月25日からは新しく作る睡眠用8時間版だけ「−16.5 LUFS、−2.0 dBTP」とする二本立てにしています。前回の実測でも3本のうち2本が −14.0 でした。では、それより前に公開した音源はどうなっているのか。公開済みの長尺19本について、マスター音源の実測と、YouTubeが実際に適用している音量補正の値を突き合わせました。

LUFSとは何か

LUFSは、音の「大きさの感じ」を数値にする単位で、国際電気通信連合の勧告 ITU-R BS.1770 で定義されています。人の耳の感度に近づけたフィルタ(K特性)を通し、無音に近い部分を除外して(ゲート)、全体を平均したものが「統合ラウドネス」です。0 LUFSがデジタルの上限で、数字が小さいほど静か。放送では EBU R 128 が −23 LUFS を基準にしています。ピークの高さ(dBFS)とは別の尺度で、ピークが同じでも「ずっと鳴っている音」はラウドネスが高くなります。

YouTubeの「詳細統計情報」に出る数字

YouTubeの再生画面を右クリックして「詳細統計情報」を開くと、「Volume / Normalized」の行に cont. と tgt. という値が出ます。2026年10月9日に自分の動画で確認したところ、tgt. は全ての動画で −14.0 dB、cont. は動画ごとに違う値でした。この表示の意味は公式ヘルプに説明が見当たらないので、下で自分の実測と突き合わせて確かめます。

測り方

  • マスター音源(アップロード前のWAV)を、ffmpegのebur128で全長測定。統合ラウドネスとトゥルーピーク。
  • 公開中の動画19本について、YouTubeの「詳細統計情報」の cont. と、Normalizedの再生%を2026年10月9日に読み取り。
  • 両者を1本ずつ突き合わせ。読み取った23本のうち4本は、手元に残っているマスターがアップロードした版と違い(値が合わない)、比較できないので除外しました。
公開済み19本のラウドネス:マスター実測とYouTubeの読み取り値
棒がマスターの実測、丸がYouTubeの表示。赤は YouTube側で音量を下げられている動画。
音源(公開日)マスター実測 LUFSトゥルーピーク dBTPYouTubeの表示 cont.YouTubeでの再生
417Hz 1時間 (5/23)-13.3-4.0-13.392%
528Hz 朝 1時間 (5/24)-13.2-1.5-13.291%
174+396+432 三重 6時間 (5/29)0.10.1-0.421%
741Hz 1時間 (5/30)-13.0-1.6-13.089%
396Hz 8時間 (5/31)-22.0-10.6-22.0100%
432Hz 集中 20分 (6/2)-18.0-16.2-18.0100%
174Hz 杉 8時間 (6/3)-22.0-12.7-22.0100%
432Hz 蛍 8時間 (6/4)-22.0-15.6-22.0100%
528Hz 集中 20分 (6/4)-18.0-14.3-18.0100%
528·639·741 夏至 1時間 (6/6)-7.6-2.0-7.648%
396Hz 集中 20分 (6/6)-18.0-14.2-18.0100%
639Hz 集中 20分 (6/8)-18.0-14.4-18.0100%
528Hz Pure 3時間 (6/9)-22.0-19.6-22.0100%
174Hz 集中 20分 (6/10)-18.0-13.9-18.0100%
741Hz 集中 20分 (6/12)-18.0-14.5-18.0100%
852Hz 集中 20分 (6/15)-18.0-14.7-18.0100%
417Hz 集中 20分 (6/17)-18.0-14.2-18.0100%
528Hz Deep Sleep 8時間 (8/6)-14.0-7.5-14.0100%
秋の虫の音 528Hz 1時間 (9/12)-14.0-6.2-14.0100%

分かったこと1:YouTubeの数字は、統合ラウドネスそのものだった

19本すべてで、cont. の値とffmpegの統合ラウドネスの差は最大0.5 dBでした。つまりYouTubeが見ているのは、BS.1770の統合ラウドネスと考えてよさそうです。そして tgt. −14.0 より大きい動画だけが、再生%を下げられていました。−14より静かな動画は、12本すべてが100%のまま、つまり持ち上げられていません。

分かったこと2:決めたはずの −14 に、揃っていなかった

19本の内訳は、−22 LUFS 付近が4本(8時間の睡眠用と3時間のPure)、−18 付近が8本(20分の集中用)、−13 付近が3本(5月の1時間もの)、−14 付近が2本(7月以降)。4つの水準が混ざっていました。理由ははっきりしていて、当時の制作レシピに「睡眠用は −22 でもよい」「瞑想向けは −18」と書いてあったからです。静かな用途の音源は静かに仕上げる、という考え方でした。

しかしYouTubeは静かな動画を持ち上げません。−22で仕上げた8時間の睡眠音源は、−14の音源より8 dB小さい音で視聴者に届きます。音量を上げて聴いた人は、次に自動再生される別の動画で大きな音を浴びることになります。音源ごとに場当たりで静けさを決めるのではなく、「上げてもらえない」ことを前提に基準を決める必要がありました。7月に −14 を標準にしたのはそのためで、音を大きくしたいからではありません。同時に、睡眠用8時間版だけは、聴く人が寝る前に一度だけ音量を決めるジャンルだと考えて、−16.5 を意図して選んでいます。2.5 dB 静かに届くことを承知のうえで、です。この二本立ての是非は、「音が小さい」という声が出たら見直します。

分かったこと3:クリップしたまま公開していた音源が1本あった

174+396+432 三重 6時間 (5/29)のマスターは、統合ラウドネス +0.1 LUFS、ピーク +0.1 dBTP。デジタルの上限に張りついていて、区間を取り出して数えると、サンプルの5〜7%が上限を超えていました(クリップ)。YouTubeはこの動画を再生21%まで下げているので、聴こえる音量は普通ですが、歪みは消えません。この動画は、当チャンネルの長尺で最も再生されたものです。記録を遡ると、書き出し工程は「−16.5 → −14.0 LUFS に補正した」と記録した直後に、検査工程が「不合格(計測値なし)」と記録していました。さらに9月の台帳照合では −0.35 LUFS と測り直されていました。異常は3回記録に残っていたのに、公開は止まりませんでした。今は不合格のままでは次の工程に進めない形にしています。この動画は、音源を作り直した新しい版を上げ直し、その記録を次の記事に書きます。

ほかに、YouTube側で下げられていたのは 528·639·741 夏至 1時間 (6/6)=-7.6 LUFS(再生48%)、741Hz 1時間 (5/30)=-13.0 LUFS(再生89%)、528Hz 朝 1時間 (5/24)=-13.2 LUFS(再生91%)、417Hz 1時間 (5/23)=-13.3 LUFS(再生92%) でした。

読む方へ:自分で確かめる方法

  1. YouTubeの再生画面を右クリック →「詳細統計情報」。
  2. 「Volume / Normalized」の行を見る。2つ目の%が100未満なら、その動画はYouTubeに音量を下げられています。
  3. 括弧内の cont. がその動画のラウドネス、tgt. がYouTubeの基準です(この記事の時点では −14.0)。

この表示は公式に説明されたものではなく、将来変わる可能性があります。この記事の数字は2026年10月9日時点のものです。

この計測で分かっていないこと

  • YouTubeの公式な基準値。ヘルプに数値の記載は見つけていません。tgt. −14.0 は画面に出た値をそのまま書いています。
  • スマートフォンのアプリや、テレビでの再生で同じ補正がかかるか。今回はPCのブラウザだけです。
  • ショート動画は測っていません。

音の高さそのものを確かめたい方は周波数ラボへ。耳の上限の話は作り手の耳は13,000Hzまでだったに書いています。

※本記事は健康・医学的な効果を保証するものではなく、医療の代替となるものではありません。心身の不調がある場合は、医師などの専門家にご相談ください。